満点地震計・満点ロガー

概要

万点規模の地震観測網を構築可能にするために,多点で高精度かつ容易に地震を観測できる安価な次世代型の地震観測システムを,
京都大学防災研究所が中心となって地震や火山観測などの関係者や関西の中小企業等が共同して開発した.
地震計は2Hz速度型地震計としては世界最小・最軽量であり,また記録装置は単一電池8個で2ヶ月以上動作可能という,
既存の最も優れたものの数分の1の低消費電力を達成している.

開発の動機

観測点の密度を飛躍的に上げる場合,人里離れた道路のない山の中などにも観測点を作ることになる.そういう場所では通常はAC電源や通信設備は無いため,DC電源で駆動しデータを現地収録型にすることが必要となる.そして,雪に埋もれた冬季にはメンテナンスに行けなくなることから,少なくとも半年間は動作する必要がある.2008年以前には,このような仕様を満たす装置は存在せず,冬季の観測を諦めるか,観測点密度を落としてAC電源で観測するか,大変な苦労をしてソーラーと衛星テレメーターにより観測点を維持するかと言う選択肢しかなかった.また,その頃使っていた地震計は大きく重く,また取り扱いが簡単ではなかった.

低消費電力記録装置(EDR-X7000)

低消費電力と高い時刻精度を両立することが最大の問題であったが,内部時計の水晶発振子を個別の特性に合わせて適切に電圧制御することにより,問題を解決することができた.この技術により,平成24年に特許も取得している(注1).装置は2008年頃に完成し岩手宮城内陸地震の余震観測で初めて現場に投入されたが,消費電力は,現時点で最も優れたものと比較しても1/5以下であり,単1乾電池8本で2ヶ月以上の連続観測の実績がある.過酷な条件の野外で用いることを第一に考え,コネクタも含めて防水構造とし,設置やメンテナンスに要する時間を短くするため,各種のパラメータ設定は記録媒体のCFカードから読み込むことなどの工夫がなされている.

小型軽量地震計(KVS-300)

磁性体の粉末焼結の技術を活用して,小型高性能の磁石とコイルのシステムを構築することにより,小型軽量化が達成された(平成23年に特許取得).また,様々な現場で実際に設置する際のことを想定して,可動式の足の形状等の細かな工夫も取り入れ,設置を簡便に行うことが出来るものとなった.地震計と記録装置の両方を同時に開発することにより,システムとして使い勝手の良いものとなった.

開発メンバー

京都大学防災研究所,株式会社近計システム,サイスモテック株式会社,日本科学冶金株式会社,㈱エス・ジー・ケイ,京都電測株式会社,九州大学理学研究院,京都大学理学研究科,総合人間科学研究科

謝辞

平成18年度京都大学総長裁量経費「超多点フィールド計測システムの開発」,平成19年度防災研究所特別事業費「次世代型地震観測システムの開発」等のサポートをいただいた。
注1 低消費電力記録装置に関する特許取得

参考資料

飯尾能久,満点計画ー次世代型稠密地震観測システムの開発ー
物理探査学会ニュースレター,14, 2012.

三浦 勉・他,近畿地方中北部における臨時地震観測
京都大学防災研究所年報,53B,203-212,2010.

飯尾能久, 2011, 次世代型地震観測システムの開発と運用 : 満点(万点)を目指して
京都大学防災研究所年報, 54(A), 17-24.