地震計の歴史に『電磁式』が登場する以前の『機械式』では、 用紙に『スス掛け』をし、そのスス(煤)を『細い針が引っ掻いてできる白いスジ』で地震の波を記録していた。 この装置は、その記録用紙を手作業で作るためのものである。 灯油などを燃やして出てくるスス(黒い煙)を紙にまんべんなく薄く付ける。 このススは手で触れると取れてしまうため、記録をとった後、せっかくの記録が消えないように、用紙の表面に『ニス塗り』をして、すすを定着させる必要もあった。 この作業は、地震計1台が1日に1枚の記録を残す度に行う。 この観測所でも、かつて、昭和5年(1930)~平成2年(1990)頃は観測のためにかかすことのできないこの用紙の準備に、所員は多くの時間を費やしていたことと思われる。 これに比べると、電磁式地震計となった今は大変便利になったと言える。 今から考えると、当時の先端観測は、日々のコツコツとした地道な手作業によって支えられていた。 その 大変さを感じるとともに、先人への敬意を表したい。 当観測所では、こうして当時記録された『スス掛け・ニス塗り』用紙が、約60年分=約15万枚ほど、現在も年月日順に大切に保管されている。